──両手をぎゅっと、握る感触。





「……え?」





次の瞬間、ふわぁっ…と、白い光が雫とあたしを包んだ。





爽やかな早朝に、カーテンの隙間から洩れる陽光のような、優しい、それでいて力強い、白い光。





その光は数秒間あたしと雫の周りを暖かく包み、雫の身体の中にすうっと消えていく。





「……参ったなァ」





雫が、ゆっくりと身体を起こした。





「し、ずく…?」




あたしの問いかけでこっちを見た雫が、にこりと笑って、握っていたあたしの両手を優しく引っ張る。




地面に座った状態で、向き合う。






雫の身体に、どう表現していいか分からないけれど、「生気」が戻った。





コンクリートの地面に溶けて消えてしまうんじゃないかってくらい薄かったその存在は、今は真後ろの鉄製のドアが全く透けて見えない程、全身が実体を持っている。






「あーあー、ひどい顔だよ、唯」

「雫っ!」

「うわっ…」





うるさいって怒鳴るのも忘れて、あたしは思わず雫の線の細い華奢な身体に抱き付いた。





「ごめんな。ちょっとだけもらったよ、唯のエネルギー」

「そんなのいい。良かった…」





雫の胸が、ドクン、ドクンと鼓動を鳴らす。あたしの身体の中で響いている。





「大丈夫なんてウソついて…バカじゃないの?」

「うーん、ぶっちゃけ消えちゃうかなぁって思ったね、リアルに。ハハハ」





「笑い事じゃない!バカ!」

「イテ!痛い痛い!ごめんなさい!」





力任せに身体を叩くと、雫が苦笑しながら謝った。





でも、謝らなきゃいけないのはホントはあたしの方なのだ。あたしのせいで、雫は消えてしまうところだったんだから。




分かってはいるんだけど、とにかく今は、雫を叩いた。雫が無事だったことは嬉しいけど、初めて悪霊に遭遇したあの瞬間よりも、雫が消えてしまうことの方がずっとずっと怖かった。





雫があたしのそんな思いを分かっているのかは分からないけれど、雫はずっと、「ごめん、ごめん!」と言いながら、あたしに叩かれるままになっていた。