「そーだなぁ」
頬を膨らませる藍の頭をポンポンと叩いて、笑顔を作る。
「次の大会は出られるように『頑張ろう』かな。家のコトもやっと慣れてきたし」
「ホントですか?」
藍の不満げな顔が、パッと明るくなった。
「こんな可愛いファンをがっかりさせたら、バチが当たるからね」
「絶対ですよ、約束ですからね?」
「はいはい。部活も毎日でるよ、なるべく」
その言葉を待っていましたと言わんばかりに、藍がニコっと白い歯を見せて笑った。
可愛いなァ、もう。
「ホラ、コーチ呼んでるよ。早くいこ」
「はい!」
顔を見合わせたあたしたちはもう一度笑い合って、小走りで部員たちの円陣に向かう。
「でも、一人暮らしってやっぱ寂しくないですか?」
「あー、ペットいるからそうでもないよ」
「へぇ~。猫?犬とかですか?」
「うーん、小型犬、かな?」
人懐こくて、生意気で、よく食べて、よく吠える。
「うん、我ながらいい例え」
「え、例え?」
「イヤイヤ、こっちの話」
円陣のワキでお腹を押さえながら大きなあくびをする我が家のペットを一瞥して、あたしは藍と一緒に円陣に混ざった。
「今度写真見せて下さいよ」
「んー、写ったらね」
そんなペットのお陰で、走るのが一層楽しくなったコトは。
藍にも、そのペットにも内緒の話。