ちなみに雫から受け取った霊感については、ビックリするほど実感がなかった。





1日過ごしてみて、全く、なんにも、何かのそれらしい気配さえ感じなかった。






「そんなモンだよ」と雫は言っていたけど、正直いって拍子抜けだ。





まァ、別にユーレイを見たくて仕方ないワケでもないし。雫もきっと日常生活に支障がない程度の力を貸してくれたんだろう。




そんなコトを思いながら、変わらぬ日常を歓迎半分、嘆き半分と言った調子で、だらだらとジョギングを続ける。






「唯先輩だって、1年のときサンゼンの選手だったじゃないですか」






思考を遮るように、藍が話しかけてきた。






「たまたま直前にいいタイムが出ただけだって」





走りながら、頬に藍の不満げな視線を感じた。





「…なんで今年は辞退したんですか」

「だから、辞退じゃないの。ユリとモッチの方がタイムがいいからなの」





何度も説明してるはずなのに、藍は何度でもこの質問をぶつけてくる。





それは、藍が大地同様とにかく色々鋭い子だっていうコトもある。





実際、コーチにこっそり辞退を申し出たのは本当だ。





悲しみをかき消すように、走って、走って、走っていた。





走っているときだけは、色んな気持ちを忘れられて、色んなコトを考えなくて済んだから。




そんな邪(ヨコシマ)な動機だけで、あたしは走っていた。






結果として、中学の時にはホントに出来すぎなくらいのタイムが出て、県の大会でも随分たくさん賞をもらった。





高1まではその延長で、なんとなく走ってはいたけれど、部活を休みがちなあたしが選手になって、先輩たちはきっと複雑な気分だっただろう。





それを洗いざらいコーチに話して、何度も話し合って、選手から外してもらったのがつい先月。




どこから情報が漏れたのか、はたまた藍のお得意の推測か。





どうやら中学時代のあたしの不本意な活躍を知っているらしい藍は、あたしが選手から外れていることに、大いなる不満があるらしかった。