午後5時45分。





オレンジの夕日が校庭を照らすなか、額にしたたる汗を拭う。





「はぁ~、やっぱ鈍(ナマ)ってるなぁ…」





久しぶりに走る3000メートルが、2倍くらいの長さに感じられた。





「テスト期間とサボり合わせて3週間でしょ?引退したかと思いましたよ」





地面にしゃがみこんだあたしに話し掛けてきたのは、市川藍。陸上部の1年生、つまりは後輩だ。





「屋上で昼寝してるヒマがあるなら練習来てくださいよ」

「なに、結局バレてたワケ?」





「大地は嘘つくとき分かりやすいですから」

「あー、アイツすごい大げさに目が泳ぐからなァ」





あとでこってり絞ってやる、大地のヤツ。





「藍は調子良さそうだね、そこいくと」

「先輩たちの足引っ張れませんから。必死ですよ」






苦笑を整った顔に貼り付けて、藍も額にうっすらかいた汗を拭う。





「1年でリレーメンバーだもんね。こりゃ将来が楽しみだ」

「やめて下さいよ、プレッシャーかけるの」





コーチの号令が飛んだのを確認して、藍とクールダウンのジョギングを始める。