雫が最初の15分で、あたしに話した大前提。





その話をした方がいいだろう。








ユーレイは、何で出来ているか。








それの答えはこうだ。











電気信号。







でんきしんごう。







ホラ。

これで、あたしの理解力が足りないせいじゃないってのが、証明されたと思う。







そりゃあ、人間が大なり小なり電気を帯びていることは知っているし。






脳の情報伝達方式が電気信号を用いるものだ(たしか、「シナプス」が「ニューロン」を通してとか、ナントカ)というのも、学校の生物の授業で習った。






だからって、「ユーレイも電気信号だ」っていうのを理解しろというのは、あまりに突飛で。論理飛躍も甚だしい。






まぁ、ただ、それが前提だと雫が言うのだから、それは信じるコトにする。








さて。







「ユーレイが電気信号だ」というのは、何を意味するかというと。







人間の記憶もまた、電気信号で出来た情報であるのだそうで。






そして、人が死ぬとその「記憶=電気信号=情報」は、死んだ肉体を離れてそのまま空気中に留まるのだそうで。






つまりユーレイというのは、その「記憶=電気信号=情報」なのだそうで。






さらにつまるところ、具体的に言ってしまえば、目の前に座っている半透明の少年ユーレイ、神谷雫は、生前の彼の記憶そのもので、かつ電気信号でできた「情報」であるということ。





それが、さっきまでの15分で雫が説明した大前提。







人間は、死んだら記憶として、情報として、電気信号として、この世界に存在する。






それを信じろと、雫は言い。





悪い冗談だと、あたしは思う。







「…信じられないと思うけど」






必死で頭を整理しているうちにかなり険しい表情をしていたらしいあたしの顔をテーブルの向こうからのぞきこんで、雫が言葉を繋ぐ。






「まずはこれがはじまりなんだ。ユーレイのはじまりで、俺のはじまり」






雫の顔は今まで見たなかで、一番真剣で。






その表情に気圧されて、あたしはコクリと頷くしかなかった。