帰り道に思う。

「あれはただの気まぐれ。
親しくさせていただいているとはいえ、
相手は宮様。というか皇太子様。
所詮私たち庶民とは生きる世界が違うの。

しかも、私は琉苑寺財閥の令嬢よ。
今はまだ決まってないけれど、
いつか政略結婚する身。
天皇家なんて、何の得にもならないわ。
そう、私は琉苑寺貴美子。
あんなのに振り回される女じゃないわ。」


次の日…

「おはようございます。貴美子様。」

「おはようございます。亜美菜様。」

「今日もいい天気ですわね。体育の授業があるから日差しが少し嫌ですが。」

「そうですわね。」

と同じクラスの菊池亜美菜様と玄関から教室に向かっていると…

「琉苑寺貴美子様、少しよろしいですか?」

と声をかけられた。

制服とリボンの色からして中等部の3年生。
中等部とは玄関は同じだけれど下駄箱も離れているし、一般的に上る階段も右端と左端で別れている。
もう階段の中ほどなのだから、私たちを追いかけてきたのかしら?

それに亜美菜様が不快感を示される。
「ちょっとあなた、失礼でなくて?
見たところ、中等部の方でしょ?外部からの進学の方かしら?
こちらは高等部が使う階段ですし、
後ろから目上の方に話しかけるなんて…
特に貴美子様は琉苑寺財閥の方なのよ!
自分が名乗りもせずに…
立場をわきまえたらどうなのかしら?」

それに中等部の子はムッとした表情をする。
その子が話し出す前に私が口を開いた。

「亜美菜様、ありがとうございます。
とりあえず、ここでは目立ちますから、場所を変えましょう。
どなたか存じませんが、あなたは付いてきてください。
亜美菜様は私は心配には及びませんので先に教室に行っててくださいね。」

「…でも…」

「亜美菜様。大丈夫ですわ。HRまでに間に合わなければ先生に少し遅れると伝えてくださるかしら?」

「わかりましたわ。貴女の顔、覚えましたから。今度何かありましたら許しませんわよ。」

と釘をさすことは忘れずに先に行ってくださった。
しかし、亜美菜様は真っ直ぐ自分の教室に向かわず、隣の侑子の教室に向かったのだった。

「ごめんなさいね。行きましょう。」
と女の子を促し、私たちは中庭のベンチまで移動した。