「どんなって聞かれても教えない。」


「あ、そう。」

綾平は聞き分けのいいやつだから

それ以上のことは聞かなかった。

俺も遥に綾平を紹介したいけど

まだ遥とのことは秘密にしておきたい。


数分して教師が体育館へ移動するよう

教室に入ってきた。

話をやめ、気だるそうな新入生たちは

体育に移動して退屈な大人たちの話を

2時間も聞いていた。

…まあ寝ていた奴も居たが。


入学式だけだというのに

くたくたになりながらも

帰りの時間になった。


綾平は"彼女を迎えに行くんだ"と

走って帰ってしまった。


俺はというとバスを待っていた。

俺と同じ方面の人は2、3人程度。

だが大体乗ってから4、5駅ぐらいで

みんな降りてしまう。


バスはごちゃごちゃしてるより

静かな方が好きだから全然いいけど。



緋ノ宮神社前に着いて

気づいたら

バス停で立ちすくんでいた。


見慣れた景色に心が落ち着く。


右のほうがら走ってくる足音がした。



「…遥。」