目が覚めると目の前には

遥の顔があった。


「樹くん、どうして泣いてるの?」


少し悲しげに笑いながら

遥は言った。


「え、あっ。ほんとだ。」


頬に手を当てると水がついた。


「悲しい夢でも見たの?」


「夢…?」

あれ、どんな夢だったっけ?

思い出せない…。


「樹くん?」


「ああ、ごめん。

どんな夢だったか覚えてない…。」


なんだろう、覚えてないことが

寂しいのか少し心が痛んだ。


「それより、受験どうだった?」


遥が少し心配そうだったので

話を逸らした。


「あ、合格だったよ!」


「そっか、よかった。」


そう言って笑って見せる。

遥もそれを見て少し安心したようだ。


「うん、でね!友達ができたの!

小柄でね、可愛い子!」


「へえ、よかったじゃん。」


「名前聞けなかったから、

次会った時に聞かなきゃ!」


「友達たくさんできるといいな。」


「うん!」


遥は一人で頑張るぞ!と

張り切っている。


楽しそうで何よりだ。


「樹くん、高校楽しみだね!」


「そうだな。」


4月から高校生だ。

二人の秘密はまだ守られたまま。


いつまで続く?


いつだっていい。


遥がただ笑っていてくれるなら。