遥との日々

少し視点が高くなった。


人混みの中、


俺は一人の男に

手を引かれて歩いているらしい。

というか手首を掴まれ、

引っ張られている。


声がした。

とても愛おしい声だった。


名前を呼ばれているような気がした。


でもなんて言ってるのか、

名前のとこだけ上手く聞こえない。


俺は足を止め、声の主を探す。


さっきの洞窟の子だ。

60代くらいのおじさんの

手を引っ張って走ってくる。


俺の目の前までやってくると

少女は息を落ち着かせた。


「ねえ、いつ帰ってくるの?」


俺はどこかに行くのか?

いつ、帰って来れるんだろう。


「5年後です。こいつは5年後7月には

帰って来れるはずです。」


さっきまで手を引いていた男が

俺の変わりに答えた。


「5年後の7月…。」


呟きながら少女は静かに泣き出した。