不思議な“キツネ”ちゃん



「えっ」

「あ?」

私とシンヤ君はあまりの驚きで固まった。

ちらりと他の人を見ると
みんなも目を丸くして固まっていた。

「、、、なんで、んなに驚くんだよ」

しょう君が不思議そうに言った。



てか、キツネちゃん。

天才なんだ。


キツネちゃんとはよく一緒にいるのに、
私はキツネちゃんの事をあまりにも知らない。

キツネちゃんに聞いたこともない。

なんか神聖な空気があるから気が引ける。


でもそしたら。

京が言っていた、
天才ってキツネちゃんの事かも。


『いつも10入りするやつがいる』

『そいつがなかなか一位を譲らないから、
俺が1度もトップを取れない』


悔しそうに呟いていた彼。

京はお金持ちだから。

家が有名だからたくさんのテストや
模試を受けていた。

テストの中でたったひとつ。

私が彼に勝てる教科があった。

京はその教科だけが苦手みたいだった。


『家庭科』


家庭科だけはいつも彼に勝てた。

『また、家庭科が足を引っ張った』

『家庭科が得意だからよい奥さんになるな』

まだまだ、中学生だったけど。

そんなことを言われるのが嬉しかった。



「朱里ちゃん、大丈夫?」

気がつくとスグル君の顔が近くにあった。

意外にも近くにいて思わず後退ってしまった。


「びっ、くりした。」

「なんか泣きそうだったよ」


泣きそうだった、か。


私はまだ彼を思い出にするには時間が必要だ。

まだ、



まだ、慣れない。



いつも隣にいたはずの彼がいないと。


違和感がしてたまらない。