「だからキツネと友達であるなんて、
怪しくてしょうがないんだよ」

そこまで話して鹿野ちゃんを見る。

もしかしたら、
キツネが俺たちに何かしようと
彼女を仕向けたかもしれない。

なんの目的があるかは知らないが。


彼女は悲しそうに俺を見ながら、

ゆっくりと口を開いた。

「つまり、
シンヤ君は私をスパイだと?」

「まあ、似たような感じ」

「そっ、か」


そう言うと彼女は目を臥せた。


「確かに怪しいよね、私」

「うん」


ここではっきりとしないとあいつらが傷つく。

信じる前にきちんとしなくちゃ。


「、、、私はスパイではないよ」

「、、、。」

「これだけでは信じられないよね」

「残念ながら」

「私はただ友達が欲しいの」

「うん」


彼女は深呼吸して俺に背を向けた。

彼女の背中はすこし震えてた。



「ただ、それだけなの」


声まで震えてる彼女が、

嘘を言ってるようには見えなかった。


「疑わせてごめんね」

「えっ?」

そこは疑われて怒るんじゃないのか?

なんで、あやまるんだよ。

「私、友達を辞めた方がいい?」


そう言われて。

俺は彼女は嘘を言ってないと判断した。

たしかに怪しいけど。


こんなにも純粋な彼女に嘘は無理だ。

「ごめん、疑って」


だって、

「、ううん。だい、じょうぶ、だよ」

こんな風に綺麗な涙を流してるのだから。

「ごめんね、ごめん。
だから泣かないで」



声を、涙を、堪える彼女を見て。


俺は


彼女を愛しく思った。





そのあとは。

彼女が泣き終えるまで抱いていた。

胸のなかで泣く彼女は
思っていたよりも小さくて。

守ってあげたくなった。



深夜《サイド》終わり