「てことだから朱理もちがうよ」

穏やかに笑顔を見せるたけちゃん。

でも私は分からないまま。

「え?どういうこと?」

「朱理も俺と似てるでしょ?」

「似てる?」

優しいたけちゃんにズルい私。

どこにも共通点は無いはずだ。


「朱理も京しかいなかったじゃん」

家族も友達もいなかった私に
声をかけてくれた初めての人。

「だから朱理も俺と同じだよ。
朱理から見て俺が最低じゃないのは
俺から見て朱理が最低じゃないのと、
同じじゃない?」

「でも、」

それでも。

根本から私はたけちゃんと違う。

私は汚れてるしズルい人間。

「それに俺は極道だから」

「そんなのっ、」

「朱理が自分を汚れてるって思うなら
俺も自分が汚れてると思うよ」

「そんなことは」

「似ているじゃん、俺ら」

私が言い返せないようにする、
たけちゃんには勝てない。

別に勝ち負けじゃないけど。

たけちゃんは私を卑下させない。


ニヤニヤと笑うたけちゃんを睨む。

「…ずるい」

「はいはい」


安心したせいか瞼が重い。

「ねるの?」

「ねむ、い」


意識が朦朧とする中、
たけちゃんが抱き締めるのを感じた。


「お休み、朱理」


その言葉を聞いて眠りについた。


鹿野朱理《サイド》終わり