鹿野朱理《サイド》


私は彼らを友達と思ってなかった?


そんな疑問が頭の中で繰り返す。




友達と思っていたはずだ。

一度も京と比べてないし、
重ねて見たこともない。


でも寂しくて彼らといたのも事実。

私は寂しさを埋めるために
彼らを利用していたのだろうか。

彼らだけでなく京も?






「朱理、大丈夫か?」

キツネちゃんが出て行って。

いつの間にか隣にたけちゃんがいた。

「た、けちゃん」

本当の自分が分からなくて。

戸惑いと不安から出た声は
震えていて弱々しかった。


「どうした?」

優しく聞いてくるたけちゃんの声に。

涙が流れた。

「わ、私、」

「ああ」

「卑怯な人間なの?
人を利用する最低な人間だったの?」

「朱理」

混乱する私を落ち着かせようと
私を撫でる手は優しかった。

「違うよ。
朱理はそんな人間じゃない」

「でも私、寂しさを埋めるために
彼らを利用していたかもしれない。
彼らだけでなく京もたけちゃんも」



ああ、
私はこんなにもズルい人間だったのか。

そんな私なんかが生きていいのか。

私なんかに、
育てられて未来は幸せなのか。


「朱理。俺は最低か?」

「えっ」

「俺は最低か?」

質問を二度繰り返したたけちゃんは
真剣に私の目を見た。

「なっ、違う!たけちゃんは、」

「俺は寂しくて朱理といる。
これでも最低じゃないか?」

たけちゃんの家は極道で、
昔から友達がいなかった。

唯一の友達で心を許してたのが京。

だからたけちゃんは、

「最低じゃないよ!」

なんでこんなことを聞いたのかは
わたからないけど。


たけちゃんは最低じゃない。


これだけは言える。


私の隣から離れないで、
慰め支えてくれるたけちゃんは
優しい人なのだから。