「…カフェオレ」
お客さんはまだ顔を上げてない。店に入ってきてから、ずっと俯いたままだ。



…彼は甘党だ。


私は特に返事もせず、カフェオレを淹れにカウンターから奥へ下がった。


トレーにカフェオレとチョコチップクッキーをのせて、彼の前に差し出した。


トレーを見てから、彼がそっと顔を上げる。濡れてきたのだろう、長めの髪からは雫が垂れそうだ。

「…ただいま。」

今度は私が下を向いたままだった。


彼はもう一度、言った。



「…ただいま。」


私の頬に手がそえられる。彼と同じように雫が流れていた。




どうしようもないほど好きな笑顔がそこにあった。




Fin