この店はマスターの目が行きわたっているせいか、何度来てもこの類の男はみたことがなかった。




マスターは、私が一人なのを確認すると決まって一番奥の席へ案内してくれる。
今晩もそう、一番奥の少し薄暗いこの席。




だから、男の行動も目立つこと無くできたってことか。





「僕もね、今日は少し嫌な事があって……」



隣の男は嫌な事があったと言うわりには楽しそうに話している。






「私は少しじゃないので、放っておいてください」



「そんな時は何も事情を知らない他人と戯れることで気がまぎれると思わない?」




耳元に息がかかるくらい近づいてきた顔。






……気持ち悪い