「すみませーん、もう一杯くださぁい」



空になったグラスを置くと、すぐに二つ離れた席に座っていた男が声をかけてきた。




「荒れてます?」



スーツ姿のその男は断りもなく隣の席に座った。

ここは、以前立花さんに連れてきてもらったことがあるバ―。
新しい家から近かったこともあって、時々一人で来ていたら、マスターとも顔見知りになった。



フラフラとあてもなく歩いていた私は、無意識のうちに見になじんだ帰路を歩いていた。




気が付けば家はすぐそこ。
だけど、このまま一人家に帰るのは嫌だった。




ふと視線がこのバ―にとまり、迷わずここへ来た。





店内にはパラパラと一人客が静かに飲んでいる