理由は私。




私の記憶には残っていないけれど、私は父親から虐待を受けていたらしい。
片鱗も記憶にないのは、どうやら人間は自分の精神を守るために色んな試みをするらしい。


そのどれも効果的でない場合、最終的に記憶そのものを捨ててしまうらしい。



と言っても、記憶はテレビの録画のように簡単ではなく、消しても完全に消えるわけではなく、意識の及ばない所へと仕舞いこむのだと医者は言った。





だから、その記憶を掘り起こそうとする出来事があると、身体がそれから守ろうとして意識を失わせるのだとも言った。




私の場合、大声で怒鳴られたり、罵られたりすると自然と意識がシャットダウンする。







そして、今のように薄らと当時の記憶の片鱗を夢のように見るのだ。