恋愛のやり直し方

重苦しい気分のままカチャリとカギを開け、ドアを開ける。

『どうかいませんように』淡い期待を込めて小さく開いたドアの隙間からなかを覗く。





「………はぁ」





一里の望みもあっけなく消えた。
玄関に無造作に脱ぎ捨てられたビジネスシューズ。




それは、見間違えることもない実の靴。





自分の身体が入る程度にドアを開けると、中からチーズの匂いがムワッと鼻に付いた。

きっと、私がいなかったからピザでも頼んだのだろうと容易に想像がついた。






いつだって実が台所に立って料理なんてしない。

まるで昭和初期の男のように『男子厨房に入るべからず』なのだ。
そして、それを彼自身特に意識していない。




それは、彼が育った環境そのもので、彼の父親もそうだった。
彼の母親もそれ自体に疑問も不満もないようだった。


まるで自分に与えられた責務のように甲斐甲斐しく男たちの世話を焼く母親。
実の実家に行った時、皆と共に食事を取る母親を見たことが無かった。