恋愛のやり直し方

『すごく迷惑です』と言わんばかりの顔を向けてみる。



30半ば位のその人は、やけに日焼けした肌に、高そうなブラックスーツがよく似合う。



見た目はモテ男の部類に入ると思う。


だけど、私の警戒心を最大に上げているのがーー




ニッコリ笑っているのに目だけは笑っていない。
丸で獲物を撃つような鋭く尖った矢のような……





「消えません?」


「は?」



それまでゆっくり柔らかくと話していた男の声が突然ワントーン低くなる。



その声が耳から入ってきただけで、ゾクリと背筋が凍る。



身の危険を体の中から感じているみたいだ。





「どうせヒマでしょ?ここから出よう」


ニンマリと笑ったその男は、私の腕を無遠慮に掴んだ。





「いや……あの、間に合ってますから。離して下さい」



こんな男に敬語とか、フツーつかわないんだけど、そうしたのは、男の手が異様に冷たかったから。


まるで、その本質を表すような温度に、本能的に怒られてはいけないと思った。






私の拒否を完全に無視する男に、引きずられるように会場を出る。



明らかにおかしな二人だけど、広い会場の隅、誰も気付いてくれない。