大学にも「保健室」があるのを知っている生徒は少ないと思う。


まして、常連の生徒は確実に少ない。


「中村くんも、よく来るよね~。」


パーテーション越しに、頼子先生の声が聞こえる。


「あんた、ちゃんと病院行ってるぅ?」


頼子先生とは、貧血を起こして出られなかった入学式以来の付き合いなので、もう2年になる。


三十代半ばの先生は、ちょくちょく助けを求めてやってくる僕に、適切な処置を施してくれる。


言わば、学校のお母ちゃんか。


お母ちゃんとか言ったら殴られそうだけど。


昨年、結婚した新婚さんだが、すでに旦那さんとの仲は微妙らしい。


割と整った美人なのだけど。


「うーん。。。行ってるけど、あんま変わんないっすね。」


付き合いも長いので、こっちも話していて楽ではある。


「ねぇねぇ。さっきの子、彼女?」


「後輩。サークルの。」


教室でぶっ倒れた僕を、ヨネと、他の友達が運んできてくれたらしい。


「なーんか、漫画みたいに泣きそうな顔してたよ~。」


苺ちゃんの、顔を思い浮かべる。


そして、さっきの醜態に身悶える思いがする。