目の前の、この子を愛しいと思う。


我ながら単純だけど。


苺ちゃんの、小さな肩を後ろからぎゅっと抱きしめる。


そして、もう一度。


今度は、自分から。


キスをする。


あー、落ちちゃったよ。


多分、すごく厄介な恋に。


正直、彼女がなんで僕を選んだのか、皆目検討もつかない。


でも、(ちょっと積極的だけど)一生懸命気持ちをぶつけてくれた彼女を、可愛いと思った。


はじめて、僕の中でイチゴネ申が、ひとりの女の子になった。




「苺ちゃん。。。」



しかも、特別な女の子に。


一旦、深呼吸をしてから、耳元でささやく。



「大切に、させて」



僕にできる、精一杯の、返事を返す。


マスターヨーダ!どうっすか!?



苺ちゃんは、こっちを振り向くと、いつものようにニコニコしていた。


「う~ん?正直ビミョーですけど、嬉しかったです」


そして続ける。


「。。。大切にしますよ。あたしも。ヨーダせんぱいは、あたしの初恋のひとですから」


そして、時計を見ると急いで立ち上がった。


「やっばい!!」


電車に遅れちゃう!!と慌てて鞄をつかむ苺ちゃん。


「まだ7時だよ?」


電車なんて、五分間隔で動いてる時間だ。


「うち、埼玉の田舎の方なので!帰る頃には深夜になっちゃうぅ!」


玄関のドアから、飛び出し


「せんぱい。キス、嬉しかった!また、あした!」


と、顔を出す。


駅まで送るよ!と上着をひっつかむと、


「病人は寝ててください!」と、ぴしゃりと言ったあと、カンカンカンと走るヒールの音が、段々小さくなって、消えた。