「えへへ~」


キッチンで洗い物をしている苺ちゃんと目が合う。


満足そうにしている僕を見て、彼女も、そりゃもう満足そうに笑う。


「野良猫を餌付けして、お腹いっぱいにしたような達成感!」


野良猫かよ!と、思いながらも、彼女の笑顔を見ていると僕もほころんでしまう。


「不思議だなぁ。ヨーダせんぱいのオウチにいるなんて!」


そう言って、ちょこんと僕の横に座ってくる。


三人掛けのソファー。


面積が広いはずなのに、彼女のひざこぞうがあたってくるのはなぜだろう。


不思議を通り越して、今更ながら意味がわからない。


「それにしても、せんぱいのオウチ広いですねぇ~!!」

苺ちゃんが周りを見回しながら感嘆の声をあげる。


僕が住む、この2LDKのマンションは、6つ違いの兄が大学に入学した時に、親が買い与えたもので。


兄が卒業した時に、入れ違いに僕が入居した形になる。


うちの両親は、二人とも医師で、埼玉の田舎の方でそれなりに大きな病院を営んでいる。


脳神経外科、外科、整形外科、内科を有していて、高齢化の現代、それなりに儲かっているようだ。


僕も、卒業後は、そこに入る。多分。



そんなわけで、与えられるがままの人生を送ってきた僕は、
こういった想定外のイベントが起こると、対処の仕方がわからない。


兄ちゃんの趣味で買った、革張りのソファー。

苺ちゃんは、急に黙ったかと思うと、僕の腕にそっと手を絡ませて、肩にこてんとおでこをぶつけてくる。


彼女の温度が、じわじわと僕に伝わる。


「。。。さっきのこたえ、聞いてもいいですか?」