「あんまり重い物は、まだ胃が受け付けないかな~と思って」


苺ちゃんが、心配そうに出してくれた料理。


大根と菜っ葉のみそ汁。


緩めに溶いた玉子と、ささみの親子丼の上にあさつきが散らしてある。


派手では無いがおいしそうだ。


もっと、女の子が作りそうな、パスタとかオムライスとかそういうものを想像していたので、嬉かった。

さすがに、そういうものだったら、胃が受け付けなかっただろう。


ほこほこと、湯気を上げる料理は、久しぶりに食欲をそそった。



「よかったら、どうぞ」


勧められるままに箸を持ち、一口、食べてみる。


柔らかい。


温かい味が、身体に染み込む。


「おいしい。」



素直に感想を洩らすと、苺ちゃんは小さくガッツポーズをした。


「やったぁ!うれしー!」


彼女は、食卓テーブルの向かいに座ると、僕が食べ終わるまで、ずっとニコニコと見ていた。


そんなに見られても、ちょっと食べづらいなぁと思ったが、夢中で食べた。



「ごちそうさまでした!」


完食し、両手を合わせて、挨拶する僕に、まるで母親のように「お粗末様でした」と返す苺ちゃん。


こんなに、きちんと味わって食べたの、いつ以来だろうな。

ふわっとした玉子も、薄味の出し汁も、細かく分けられたささみも、大根のみそ汁も、おいしかった。


お母さんから、料理を習ったのだろうか?きちんとした家庭の味ってこんななんだろうな。


「身体、暖かくなりませんか?」


苺ちゃんは、食器を片付けながら、歌うように言った。


卵と肉は、貧血にいいですし、大根は弱った胃に効きますよ~。


親子丼に、少しだけ生姜を擦ったので身体もぽかぽかしてくるはずです。


「せんぱい。食生活って大事なんですよ~」



お医者さんになるんだったら、食生活、きちんとしないとばてちゃいますよ?



そんな説教を喰らっていると、本当に胃の辺りが温かくなってくるのを感じた。



「食べることって、すごいな~」


そして、それをきちんと証明して、頭でっかちの先輩に教えてくれる、未来のナースを頼もしく感じた。



満腹になり、気持ちも穏やかになったところで、視界の隅にヨーダが映った。


「陽太よ、問題は何も解決していないぞ」


マスター!ま、まったくです!