「さて、南沢。 あと1分以内に音楽室に入れば遅刻にはしないが、どうする?」
「え? あっ……行きます行きます!! ダッシュで行きます!!」
「俺はコイツと少し話してから行くから、その間自習な」
「はいっ!!」
わぁっ、助かった!!
半沢先生ってば、なんていい人なんだろう!!
「半沢ティーチャー、女子には優しいですね。
優しいっていうか、甘いですね」
「うるせ。 お前がこんなところに居なきゃ遅刻扱いしてたっつーに」
「そうですか、じゃあ俺は消えますんで」
「コラ本田、俺の説教から逃げようってか」
「まぁ、そうなりますね」
「このやろ、進級出来なくしてやるぞ」
「それ犯罪じゃないですか?」
……と、ギャーギャー騒ぐ半沢先生に、本田先輩は淡々と返事をしていく。
なんていうか……二人の温度差が、ありすぎる感じが……。
でもなんか、それもまた楽しい感じ?
「この人の雷の巻き添えになる前に、早く行った方がいいよ」
「あっ……はいっ」
相変わらずギャーギャー言ってる半沢先生から逃れるようにしながら、本田先輩が笑う。
うわぁ……ほんと、カッコイイ……。
って、また見とれてる場合じゃないよね。
「色々、ありがとうございました」
深々と頭を下げた後、音楽室へと走る。
「コラ本田っ、待ちやがれ!!」
半沢先生のそんな声を後ろに聞きながら、私は一人、クスッと笑みをこぼした。



