南沢というのは、私の名字。

それを言った半沢先生は、相変わらずの笑顔で、今度は先輩を見た。




「本田。 お前も遅刻だよ?」

「大丈夫です、俺はサボりですから」

「おいおい、担任にハッキリ言うことか?」

「担任だから言うんですよ。 先生こそ、急がないと授業の時間が無くなりますよ?」

「別にいいよ。 特にやることもねぇし」




……『特にやることもない』って発言は、先生としてどうかと思う。

でも半沢先生とこの先輩……本田さんって言ったっけ。

凄く仲が良さそう。 まるで、兄弟みたい。

私は一人っ子だから、兄弟がどういうものかはよくわからないけど……でも、なんだか『先生と生徒』ってだけの関係じゃないような、そんな感じがした。

……なんて言うと、ちょっとアブナイ想像しちゃうけど。

そういう意味は全く無くて、なんていうんだろう……お互い信頼し合ってるような、そんな感じだ。