「視えるんです」







「だから、一人になるなと言っただろう?」




途切れそうになった意識の中で、先輩の声がした。




「俺が横に居るのに、何故『自分は一人だ』と思う?
俺が一緒に居るのに、何故お前は彼女を狙う?」




言葉の前半は、私に対するものだろう。

そして後半は、鏡の女に対するものだろうか。



グニャリとしたソレは、声にならない叫びを上げ、苦しそうに体をひねらせる。




「お前が誰を引き込もうが俺には関係無いけれど。
この女だけは、絶対にダメだ」




首を絞めていた力が、弱まる。
もうソレは私を見てはおらず、もがき苦しみながらも、背後に立つ本田先輩へと憎悪をあらわにしていた。

それでも先輩は、ソレを押し退けるようにしながら私に近づいた。




「この女は俺の女だ。 絶対に、お前には渡さない」




その声を聞きながら、私は深い眠りへと落ちていった。


痛みはなく、体の重さもなく、柔らかで温かい何かに包み込まれ、そのまま、深く、深くへと……ーー。