「……あ……」
ーー……かが、み……。
いつの間にか階段を下り始めていた私は、踊り場にある鏡に視線を向けていた。
普段は見ないようにと意識し、友達と居る時でさえ視線を向けなかった鏡を、見てしまったのだ。
鏡の中に居る私は、音楽室で泣いたせいか少しだけ目元が赤くなり……どこか疲れたような顔をしている。
自分でも真面目だなと思うくらい、制服のスカートの丈は長く、首もとのリボンもしっかりと結んである。
でも、ほんの少しだけ曲がってる。
それを直そうと、手を首もとへと伸ばした時……ーー気付いてしまった。
襟元に、誰かの手が……。



