「視えるんです」





「私……小さい時から、本当に怖がりで。
お化け屋敷とか、ホラー映画とか……作り物だってわかっていても、足が竦んで、体が震えてしまって。
ホンモノを見たことなんて、無いですけど……でも頭の中で、想像してしまうんですよね」

「髪の長い女の人が背後に立ってる、とか?」

「そうですそうです、頭の中で想像した人がそのまま後ろに居るような……そんな風に感じてしまって、振り返ることが出来なくなって。
お風呂で髪を洗う時とか、本当に怖いです。 後ろに誰かが居るような……鏡を見たら誰かが居るような……そんなことばかりを、考えてしまうんです」




怖くて大嫌いなのに、頭の中はそういうことばかりを考えてしまう。

弱虫のくせに、いつもいつも、頭の中に怖いものが浮かんでしまうんだ。

だからこそ、そういった話自体を避けてきたけれど……半沢先生と一緒に居たら、怖い話ばかりだった。

私は今、一人になることが怖い。
色々な想像をしてしまう自分が、怖いんだ……。




「……本田先輩は、怖くありませんか?」

「ん?」

「えっと……視える、んですよね……?」




本人に『視えるんですよね?』なんて聞くのは、凄く失礼なことかもしれない。

だけどどうしても、知りたかったんだ。




「怖くは、ないですか……?」




人とは違うモノが見えてることが、怖くはないのかな?と、それが知りたかった。