「視えるんです」



………

……




補習という名目で残されたけれど結局補習らしいことは一つもせず。
私は半沢先生と本田先輩と一緒に音楽室でご飯を食べただけだった。




「じゃあな、南沢。 またそのうち飯に付き合えよ」

「甘いもの尽くしじゃなければいいですよ。 あ、あと怖い話も無しで」

「あー、どっちも無理だな。 甘いものは俺の楽しみであり、怖い話はお前の反応を見て楽しむためには必要だからな」

「……性悪ですね」

「おう、サンキュー」




……って、誉めてるわけじゃないんですけどね。

でもまぁ……結構楽しかったな。
いや、怖い話はイヤだけど。

だけど半沢先生と本田先輩のやり取りとか、見てるとすっごく楽しかった。

楽しい話だけなら、また一緒にご飯食べたいな。

というか……本田先輩と、また一緒にご飯食べられたらいいなぁ。

今度は二人きりで、ラブラブしながら……なんてねっ。




「南沢ぁ」

「はい?」

「後ろに首あり人間」

「ギャー!! ……って、本田先輩のことを変な風に言わないでくださいっ!!」

「あはは、じゃあまたな」




楽しそうに笑う半沢先生を音楽室に残し、私と本田先輩は横に並んで廊下を進む。

午後の授業開始まで5分を切っている為か、廊下の人通りは少ない。

二人きり。と言える状態だ。




「南沢さんは、すっかり半沢ティーチャーのオモチャだね」

「……わかってるなら助けてくださいよぉ……」

「無理。 あの人はああいう人だから諦めるしかないよ」

「え、そんなぁ……」

「必要以上に怖がらなきゃいいんだよ。 怖がるから、あの人は余計面白がる」




そんなこと言われても……怖いものは、怖いんです……。