「なんか、先輩に甘いのをいっぱい食べさせて、イジメたいです」
「……キミは、見かけによらずSだね」
「えー、あんな顔見たらみんな同じこと思うはずですよぉ」
クールな先輩が甘いものを一生懸命口に運び、涙目になっている。
母性本能をくすぐられるというかなんというか、とにかくもう、可愛いのだ。
そんな姿が見られるのなら、Sにもなってしまうだろう。
「今度、何か甘いお菓子手作りしてきますね」
「……勘弁してくれ」
そんな風に言ってため息をつく姿も格好良く、そして可愛くて。
私は一人、ニヤニヤと先輩を見つめた。
そんな時、半沢先生がふふっと笑って私を見た。
「南沢。 お前自分がやられるのはイヤなくせに、人にはするのかよ」
「へ?」
「俺がおばけの話をすると泣くじゃん」
……あ。
確かに、同じことだ……。
大嫌いな幽霊の話はされたくないのに、先輩が嫌いだと言った甘いものの話を、私はしてる。
最低だ。
「……ごめんなさい、もうしません」
誰だって、嫌いなものの話はしたくないしされたくないよね。
うん、もう甘いものの話はやめよう。
そう思って先輩を見ると……、
「あ」
「え?」
「首無し人間」
「ギャー!?」
「いやいや、嘘だから。 これで、おあいこね」
あっ……やられた……。
うぅ……でも確かに、これでおあいこだ。
「……もう、怖い話はしないでくださいね。 私も、お菓子の話とかは、しないので」
怖ず怖ず言う私に、先輩はにっこりと笑って頷く。
……よかった。 先輩、すっごく優しい。
そういうところも、なんか、好きだなぁ……。
「おいおい、怖い話も甘いものも大好物な俺はどうすればいいんだ?」
……。
「半沢先生は、」
「半沢ティーチャーは、」
ーーとりあえず黙っててください。
本田先輩と私の声が重なり、先生へと真っ直ぐに飛んでいった。



