「視えるんです」



開きっぱなしだったピアノの鍵盤の蓋が、大きな音を立てて閉じた。

まるで、誰かが勢いよく蓋を閉じたかのような、そんな強さと音。

まさか、

また“何か”が……ーー。




「あっぶね。 ピアノ弾いてたら両手死んでたな」




ーー……って、先生……そんな呑気に言ってる場合じゃないでしょうっ……!!




「で、出たんですよっ!! 幽霊が!!」




普通は閉じないものが勝手に閉じた。 しかもあんなに勢いよく、だ。

そんなあり得ないことが出来るのは、幽霊以外には考えられない。

先生は普通の顔してるし、本田先輩も表情を変えないけれど。
私の体はガクガクと震え、立っているのも困難な状態。

もう、イヤ……。




「ちょいちょい、南沢。 なんで泣く?」

「だ、だってぇ……」

「お前はガキか」




ガキ。
そう呼ばれたって、もういい。

体は震え、涙はボロボロと溢れ、息も苦しい。

ガキでもなんでもいいから、この状況から、早く抜け出したい……。