「視えるんです」





「お願い……たす、けて……」




ーー……か細い、女の声。

鏡の女が、先生の足にしがみつくようにしながら助けを求めている。

その瞳からは涙がこぼれ落ち、時折苦しそうに顔を歪めている。





「……俺も助けられるものなら助けたいが、今は無理だ。
頼む、もう少し待ってくれ。 今の俺には、不可能なんだ」




女を見下ろす先生は、視線は冷たいものの……言葉の感じは、何故か柔らかい。

これは……子供の幽霊を『上』へと送った時と似ている。




「雨宮ならお前を今すぐ『上』へと送れる。 どうする? 俺を待つか? それとも、雨宮と行くか?」




……え?

雨宮さんなら、今すぐ『上』へ……?

ちょっと待って。それってどういうこと?
雨宮さんが鏡の女を連れていくということは……そのあと雨宮さんは、どうなるの……?




「先生。雨宮さんは……」

「『上』へ行ったら、もうこちらへは戻ってこない。
いや、本来なら『上』へ行くことが当たり前なんだ」

「……『上』、へ……」

「彼女や雨宮のように、狭間に引っかかった存在というのは、哀れ以外の何物でもない。
送ることが出来るのなら、送ってやった方がコイツらも幸せなんだよ」



幸せ。

……理屈としては、わかる。


狭間に取り残され、人には気付かれずに生活していくことの孤独。

……泣きながらすがっている彼女は、地縛霊としてじゃなく、一人の女の子として助けを求めている。と思う。


そんな姿を見て思うのは、確かに『哀れ』というものだ。
救えるものなら救ってやりたい。

そうは思うけど……。




「……もう二度と、雨宮さんには会えないということですか……?」




私を見て笑ったアレが、雨宮さんの最後の姿ということになるの……?