「……鏡……」
階段の踊り場にある鏡。
私が、引きずり込まれそうになった場所だ。
その鏡をジッと見つめる先生は、口元に僅かな笑みを浮かべる。
……その笑みが何を意味しているのかは、すぐにわかった。
鏡に映った男子トイレに、居た。
直接見ても何も無いのに、鏡を通して見ると、確かに居る。
どす黒いオーラをゆらゆらと揺らす、人の形をした『何か』。
そのそばで倒れ、下半身が闇に捕まった翔先輩。
そしてーー『何か』へと向かっていこうとする雨宮さん。
後ろ姿だったけど、それは確かに雨宮さんで。
どす黒い『何か』のオーラに対し、彼の放つモノは、太陽が放つような眩しい光だった。
「雨宮さんっ……!!」
思わず出た私の声に、雨宮さんは振り返る。
その時の彼は、とても優しい顔で笑っていた。
いつも無表情で、私に対しては面倒くさそうにすることが多かったのに。
その雨宮さんが、優しい笑みを浮かべていた。
まるで、『ありがとう』と言っているかのように。
『サヨナラ』と言っているかのように。
直後。
雨宮さんが、闇に取り込まれた……ーー。



