「南沢」
翔先輩……じゃなくて、雨宮さんが声をかけてきた。
「悪かった」
「え……?」
「何も出来なくて、ごめん」
とても悲しそうな、辛そうな顔。
雨宮さんがこんな顔をするなんて、思ってもいなかった。
「俺のせいだ」
「……違います。 私が……」
「俺がお前を救えていたら、こんなことにはならなかったんだ」
雨宮さんが私の手を掴む。
さっきは掴むことが出来なかった、手……。
体があれば、今のように……そして、闇に捕らわれてしまった先輩のように、掴むことが出来る。
「……私に、力が無いせいです。
先生や、翔先輩のように……触れることが出来て、いれば……」
それを思うと、また涙が目に溜まる。
ほんの少しでいい。
もう少しだけ、私に力があったなら。
雨宮さんに触れることが、出来ていたら……。
あの手を掴むことが出来ていたら、事態は変わっていたはずだ。
雨宮さんに手を引かれ、引きずり込まれる前に離れることが、可能だったはずなんだ。
「……ごめんなさい。 私は、やっぱり足手まといだったんです。
危険を増やしてしまったのは、私です……」
何故あの女が私を狙うのかは、わからない。
でも私のせいでこんなことになったのは、事実だ。
私が先輩から離れていれば、先輩は……。
「『いつかは起こるものだった』」
「え……」
「お前は本田にそう言っただろう?」
あ……先輩と初めて二人で帰った時の言葉だ。
先輩の家の話を聞いた時、巻き添えを食うとか、そういう話をされて……。
あの時私は確かに、そう言った。
……あの時、雨宮さんはそばに居たんだ……。
「いつか起こることだったと思うのなら、深く考えることはない。
ただ……それを防ぐすべがあったのに防げなかった。 それは、俺に非がある」



