「視えるんです」



それを聞いた雨宮さんは、何も言わなかった。

先輩が消えてしまった闇……今はもうただのガラスとなった場所を、見ているだけだった。




「雨宮」




もう一度、先生が名前を呼ぶ。
その時、ようやく雨宮さんは先生に視線を移し、そして私を見た。


だけど言葉は無く、ただ真っ直ぐに私を見ているだけだ。

そのままゆらりと、先輩の体のそばへと移動し……そして、中へと入った。




……先輩の体が、ピクリと動く。

次に、全く開かなかった瞼が、ゆっくりと開かれた。


雨宮さんが、翔先輩の中に入った。

以前私の中に入った時のように、今は先輩の中に雨宮さんが居る。



顔は翔先輩なのに、やはり先輩とは違う。

無表情なソレは、雨宮さんそのままだった。