「視えるんです」



にっこりと、だけどどこか疲れた顔で笑う本田先輩は、椅子に座ったあと深く深く息を吐き出した。

そして、『しんどい』と言って目を閉じる。




「いつもは雨宮が俺に力を貸してくれるから、話すくらいは大丈夫なんだけど。
今日は俺だけだったから、さすがに疲れた」

「雨宮さん、居ないんですか……?」

「ここ数日見てない。 まぁ、もともとフラフラしてる人だからね」

「……そう、ですよね」




雨宮さんは、浮遊霊と呼ばれるモノ……。

他の霊とは少し違うけど、でも、ずっと本田先輩のそばに居るわけじゃない。

一時期は、私のそばに居たらしい。けど、それ以外はどこで何をしているのか、何を見ているのか、私や本田先輩にはわからない。

……そういう、存在なのだ。




「雨宮が居なくて、寂しい?」

「え……?」

「雨宮のことを、気にすることが多いから」




……そう、かな?
私、そんなに雨宮さんのこと、気にしてる……?




「まるで、雨宮に恋してるみたいだ」

「恋……って、恋!? そ、そんなわけないですよっ!!」




私が雨宮さんに恋してるなんて、あり得ない!!

そりゃあ雨宮さんはイケメンさんだけど!! でも幽霊だし、時々怖いしっ……!!




「確かに気にはしちゃいますけど、でも、恋なんかじゃないですっ!!」

「そっか」

「わ、私っ……私は、本田先輩のことが好きですからっ……!!」




……あっ……。

な、なんで私、こんな時にそんなことをっ……!?