「視えるんです」



ゴクゴク、とお茶を飲み終わった先生は、空のペットボトルをコンビニの袋の中へとしまった。

それから、私を見る。




「お前が悩んでるものとは違うかもしれないな。
俺の昔話なんかに付き合わせて、悪かった」

「いえ……」


「なぁ南沢。本田のこと、許してやってくれないかな。
アイツと何があったのかは、俺にはよくわかんねぇけど……でも、本田は悪い奴じゃない。それは、事実だ」

「……はい」




先輩は悪い奴じゃない。

うん、わかってる。 先輩は、そんな人なんかじゃない。

あの時の言葉が本気なのか冗談なのか、今もまだわからないけど……。

でも先輩は悪い人なんかじゃない。 それは、ちゃんとわかってる。




「あの……本田先輩、空き教室に居ると思いますか……?」

「あぁ、居るだろうな。 本田は一人で居ることが多い。 一人で居る時は、大抵あそこだ」

「……じゃあ私、下に行ってみます。
行って何を話せばいいかは、わからないままですけど……」




わからないけど、先輩と話したい。
そう思ったから、私は先生に頭を下げ、音楽室の扉へと歩き出した。




「南沢」




少し離れたところで、先生がヒョイッと何かを投げてきた。
これは……メロンパンだ。




「会話が止まったら、そいつを無理矢理食わせてやれ」

「……はいっ!!」




にっこり笑った先生に、私も笑みを返し、音楽室をあとにした。