「別に、何も……」
「喧嘩でもしたのか?」
「え?」
「『嫌われたかもしれません』って、アイツが言ってたから」
……本田先輩、そんなことを先生に……。
「本田先輩のことは、嫌いじゃありません。 ……というか、好きです。
でも私、先輩のことが、よくわからなくて……」
「アイツの言葉が、冗談なのかそうじゃないのかわかんねぇ。ってことだろ?」
「……なんでわかるんですか」
「『冗談は冗談であり、時には本物でもある』って、わけのわかんねぇこと言ってたからな」
……冗談は冗談。
だけど、時には本物でもある。
って、結局はどっちなんだろう……。
冗談で言うこともあるけど、時々は本当の気持ちを言うってこと?
じゃあこの前の先輩の言葉は、本物? それとも、やっぱり冗談?
……全っ然、わからない。
「……本田先輩って、なんなんでしょうね」
先輩本人に問いかけたことを、今は半沢先生に問う。
「んなもん俺が知るかよ」
……ですよね。
うん、聞いた私が馬鹿でした。
「冗談か本気かはわかんねぇけど、俺はアイツの言葉を信じて今までやってきたがな」
「……先輩の、言葉?」
「あぁ、この前言いそびれたやつだ」
この前、言いそびれた……。
うーん、何かあったっけ?
「『無理してまた狙われたらどうすんだよ』って言った俺に本田が返してきた言葉、だ」
……あ、思い出した。
1年生の時に事故に遭って意識不明になった先輩が、学校に復帰した時の、言葉……。
そう言えばあの時、ピアノの前の椅子が勝手に倒れてきて……結局先生の言葉は聞かず終いだった。
「先輩は、先生になんて……?」



