「視えるんです」



……。


気が付いた時、私は私の体に戻っていて。

先輩の唇が、確かに『私』へと触れていた。




二度目の、キス。

その唇が離れた時、本田先輩は私を見て微笑んだ。




「もしまた雨宮が入った時は、俺がこうやって救い出します」

「へっ……」

「いくら雨宮でも、俺と唇を重ねるのはイヤだろうからね」




いたずらに笑う先輩の後ろ側で、雨宮さんが不快そうに眉を寄せている。
『この野郎……』と怒りのオーラを先輩にぶつけているけれど、先輩は微動だにしない。




「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

「あっ……はい……」




全くもって、いつもと変わらない本田先輩。
キスしてしまったのに、表情はいつもと同じでザ・クール。

チラリと雨宮さんを見たけれど、それ以上は何も言わず、さっさと空き教室を出て行った。