「視えるんです」





「いってぇ……手加減なしかよ……」

「『俺』の中に手加減という文字はない」




先輩は心底痛そうな顔をする。

それを見下すのは、『俺』と言った私の体。
そしてもう一発、先輩の頭を叩こうとした。が……、


ガシッ


と、今度は先輩がその手を掴んだ。

そして何を思ったのか、突然……先輩は私のものじゃない私の体を抱き締めた。




「今すぐ志緒から出ないと、俺がお前を殺すよ?」

「……『俺』の方が、本田より力がある」

「関係ないね。 俺の女の体を使うお前が悪い」




抱き締められている感覚を、少し離れたところから感じながらも、胸がドキドキと鳴っている。

先輩に、抱き締められてる……。

例えそれが、私のものじゃない私の体だとしても。




「志緒は、俺のものだよ」




その言葉と共に、口づけが交わされるーー。