と、それを聞いた時、先輩は『わからない』と首を横に振った。
「俺は、雨宮とはほとんど話してないんだ。
だから彼がどういうモノなのか、正直わからない。
俺のそばに居ることは多いけど……会話することは少ないんだよ」
「そう、なんですか……」
……雨宮さんって、本当に無口なんだ。
あ、じゃあもしかして、雨宮さんが自殺した理由も、先輩は知らないのかも?
「先輩。 雨宮さんが自殺した理由、知ってます?」
「いや、聞いてない。 もしかして、南沢さんには話した?」
「はい。 それはもう、驚くような理由で……ーー」
ーー……と、言い掛けた時。
背筋がゾワッとなり、冷たい空気が私を包み込んだ。気がした。
「余計なこと言うなよ、南沢」
「ひぃっ……雨宮さんっ」
冷たい視線を向ける雨宮さん。
口元の動きは小さいけれど、声はハッキリと私に届く。
まるで、脳に直接話しかけてくるような、そんな感じだ。
「黙らないと殺すぞ」
「黙ります黙ります!! 何も言いません!!」
怖い!! めっちゃ怖い!!
幽霊の本領発揮、といった感じだ。
自分で何言ってるのかわかんないけど、とにかくそのくらい、怖い!!
「雨宮、なんだかんだで南沢さんと親しいんだね」
「親しくない」
「でも南沢さんは、俺よりも雨宮のことに詳しそうだけどな?」
「……うるさい、成り行きだ」
雨宮さんの答えに、本田先輩は微笑む。
その笑顔が気にくわなかったのか、雨宮さんは無表情のまま本田先輩に近づき……バシッと頭を叩く動作をする。
でも当然のように、雨宮さんの手は本田先輩をすり抜けた。



