「視えるんです」





「私の名前は、シオです。塩……ではなく、志(こころざ)すの『志』に、一緒の『緒』で志緒です」

「俺はカケル。飛翔の『翔』でカケル」




本田 翔。 そして、南沢 志緒。

ようやくわかったお互いの名に、お互い微笑み合う。




「志緒ちゃん、か。いい名前だね」

「ありがとうございます。 先輩の名前も、素敵です」

「いつも『しょう』と読まれてしまって、いちいち訂正するのが面倒だけどね」

「あー、なるほど」




確かに、翔という字を見たら真っ先に『しょう』と呼んでしまう。
説明する時も、先輩は『飛翔の翔』と言っていたしね。

でも、とても素敵ないい名前だと思う。
なんていうか……本田先輩に合っているような、そんな気がする。




「あ、私の名前……小学校の時とかは、よくからかわれましたよー……。
まだひらがなでしか書けない時は、やっぱり最初に浮かぶのが『塩』だったんで。
あだ名が『塩子(しおこ)』……って、ひどいと思いません?
からかうのを通り越して、これはもう、いじめですよねぇ……」




漢字で書けるようになった今はもう笑い話だけど、当時は本当にイヤだったなぁ……。

小学生って、どうでもいい変なネタで盛り上がったりとかしょっちゅうだったし。
ほんと、今思えば『なんて馬鹿なんだろう……』と思うようなことだらけだ。




「小学生の時って、確かにそういうことばかりだったね。
あとは、妙に下ネタに食いついたり」

「あ、やっぱりそうですよねー。 なんであんな馬鹿なことやってたんだろう、って、今は思いますよね」

「だね」




にっこりと笑う本田先輩。
優しいその笑顔に、私も笑顔になる。