……雨宮さんが、私を守っていた……。
私に『邪魔をするな』と言った雨宮さんが、私を……。
「何も知らずに過ごしていれば、平和で居られたものを。
半沢先生は『大丈夫だ』と俺に言ったが、何故そう言い切れる?
何故、なんの根拠もなく『大丈夫だ』と言える?
俺には先生の考えていることが、わからない」
そう言ったあと、雨宮さんは不機嫌そうに眉を寄せた。
理解に苦しむ。と言葉を続けて。
「……とにかく、だ。 もう俺にはお前を止められない。
怖いモノを視て怖い思いをしても、それはお前の責任だ。
文句があるなら先生に言え。 まぁ、『俺は知らん』と笑われて終わりだろうがな」
それを言い終わるかどうかの間に、雨宮さんはふわりと飛び上がる。
そして『じゃあな』と、半透明な姿を更に薄くしていく。
「……っ……雨宮さん!!」
「あ?」
完全に消えてしまう前に、雨宮さんを呼び止める。
その瞬間、雨宮さんの姿はまた半透明へと戻り、私にクールな視線を向けた。
その視線に、言おうかどうか迷うけど……意を決して、言う。
「あ、あのっ……何故、私を守ってたんですか……?」
私のことを、雨宮さんは煩わしく思っていたはずだ。
余計な手間のかかる、足手まといな存在……そんな私を、彼は何故守ってくれていたんだろうか?
その答えが知りたくて、雨宮さんを真っ直ぐに見つめた。
「視えない人間で居る方が、楽だからだ」
無表情で言った雨宮さんは、今度こそその姿を消した。