「美術室、ね」

「……はい」

「今日は諦めた方がいいね。 今野ティーチャーは3分前に教室に入ってるし、チャイムと同時に出席を取る。
その時点で教室に居なかった者は遅刻じゃなくて欠席扱い」

「えっ……そんなぁ……」

「あのオバサンは厳しいよ。 あぁでも、男子には少し甘いかも」



……男子には優しい、か。 それじゃほんとに、望み無しだな……。




「よかったら、入る?」

「え?」

「どうせ間に合わないなら、いっそサボっちゃえばいいわけで。
中で茶でもしていけばいいよ」




そんな突然の誘いに、心臓は高鳴り、顔は一気に赤くなる。

空き教室に、男と女が二人きり……。
そんなのはもう、変な想像ばっかりしちゃうじゃないですかっ……!!




「イヤならいいけど」

「い、イヤなわけじゃっ……」

「じゃあどうぞ」

「は、はいっ……!!」




……ということで、再会したばかりの本田先輩と、二人きりで空き教室に入ってしまった。

ここで空き教室に入ってしまったばっかりに、私は彼の『秘密』を知ってしまうことになる……。