「人形、の、付喪?」
行人はもう一度、遊美の体を見た。
白い柔らかそうな肌。かすかに生えている産毛。肌色の奥に透けて見える、青い静脈。
やはり信じられない。これが人形だというのか。
「遊美ちゃんは付喪なんだ。だから、普通の人間にはできない、怪物のような動きができる。付喪とも、互角に戦える」


陸は、遊美の首を手に取った。そして、遊美の体にむかって、
「さあ、終わった。帰ろうか」
とつぶやくと、部屋から出て行こうとした。遊美の体も、歩いてそれについてゆく。
「おまえら、いったい何なんだよ?」
行人は、また同じことを聞いた。
純粋な疑問だった。
聞かずにはいられなかった。
どう見ても人間にしか見えないほどに、精巧に作られた少女の人形の付喪。
そして、それと共に行動する少年。
この二人組は、異常だ。


陸は、わずかにふりかえって、言った。
「付喪狩りだよ」
その言葉を最後に二人は行人の家から去っていった。