黒髪に黒目に白い肌なんて日本中に何千人といるはず。


だから、私は日野家の者であなたは影崎家の者でしょうなんて簡単に言えない。

でも、霊気がなんとなく影崎家っぽい。


一応、名前は名乗ることにした。


「私は、日野早苗(さなえ)」


私が名乗ると、男は一瞬何かを考えるような仕草をして、言った。


「日野家の者か」


「うん、そう。てことは、影崎家の人?」


私が問うと男は頷いた。


影崎家と日野家が接触することは少ないから、私は今貴重な体験をしてるんだなと思った。


「お前が運んだのか、俺を」


「そうだよ。結構軽かったよ」


「さすが、日野家は怪力だな」


「日の恩恵と言いなさい」


失礼なことを言ってくる男に対してイラッとする。

せっかく助けてあげたのに、なんて思う。


「訊きたいことがあるの。......あなた、昼とか大丈夫なの?」


私の質問に男は眉を少し動かした。


「俺は....」