彼は、その日から大学にこなくなった




ヤバい人達のグループに入ったと風の噂で聞いた



もう、あの頃の優しい秀君は見られないのだろうか






ある日だった



「麻衣、ちゃん」


橘先輩、だった



「先輩……お久しぶりです」



「久しぶり…元気だった?」


「はい、あの……どうしてか、聞いてもいいですか?私…信じられなくて……」



「うん…じゃあどっか、座れるとこ入ろうか」



たどり着いたのは、あの喫茶店



「ダージリンお願いします」

「私コーヒーで」




「……私ね、親の都合で結婚することになったんだよね…けど…やっぱりまだ、忘れられなくて………あんなひどいこと言っちゃってもう戻れないだろうけど…もう一度、はなしてこようと思うんだ」



心臓をうたれるようだった



なんだ、相思相愛なんだ



どうしようもなく悲しくて


どうしようもなく虚しかった



秀君のことがまだ好きだったなんて、知らない


秀君は、もう私がほんとに必要なくなるんだ





幸せを願ったのに、どうして今私はこんなにも憎いんだろう



それが、一番秀君が幸せになる方法なのに



どうして、やめて、なんて思ってしまったんだろうか




自分だけが、世界で醜くて汚い



「秀く…五十嵐先輩は、今も橘先輩の事好きだって言ってました、だから、大丈夫です…幸せになってください」



「うん…ほんとにありがとう…麻衣ちゃん……」



これでいいんだ




「頑張って下さい、先輩」


「ありがと、麻衣ちゃん」







橘先輩とは、そこで別れた