「こんなところまで帝王様自ら追ってくるなんてよっぽど暇なのね。」
退路を断たれた今の私にできる最大限の抵抗だった。
「あぁ。そうかもな。おかげで少しは楽しませてもらったよ。」
「随分性格が悪くていらっしゃる。」
「それは誉め言葉として受け取ることにするよ。」
「頭沸いてんじゃないの。」
こうやって悪態をつくことで、少しでも情報データを奪われるのを先延ばしにしているだけ。
こちらが必死に時間稼ぎしているのに対して、帝王も鉄仮面も何ともないように涼しい顔をしている。
「社長。お戯れはその辺で。そろそろお時間です。」
そろそろお開きだと鉄仮面秘書が知らせる。
「だそうですよ。水嶋社長?速やかにお帰りになっていかがかしら?」
それでも尚、私は悪あがきを続ける。
そして、私の悪態に今度はどんな返事をしてくるのかと帝王のターンを待った。
「………………。」
しかし、いつまでたっても何も応答がなく、急に謎の沈黙がその場に流れる。
かと思えば、コツコツとこちらに向かって革靴で歩いてくる音がビルに響き渡る。
それは私の前で止まった。
目を合わさないようにしていた私の顎に手を添え、クイッと上を向かされ、強制的に視線を合わせられた。
その動きは、とても優雅で不覚にも一瞬見惚れてしまっていた自分いた。

