「できれば帝王にはもう二度と会いたくないわね。」
誰もいない暗い廃れたビルの中で、一人で呟く。
その声は周りが静かすぎるのと建物が鉄骨造であるからか声が反響する。
「……ほー。それは残念だ。」
「………っ!?」
私以外誰もいないはずのこの場所に低く、だけどよく響く声が耳元で聞こえた。
バッと声のする方を見ると、私のすぐ隣で壁に凭れ掛かっている男の姿がそこにあった。
水嶋 匡、本人だ。
いつの間にここにいたのかわからない。全く気配がしなかった。
さらに私は走り過ぎて体力の限界をとうに超えているのに対し、帝王は息一つ上がっていない。
一気に絶望の底へと落とされた。
それでも逃亡本能はまだ働いていて、ヘロヘロになりながらもすぐにそこから立ち上がり重い足を動かして入り口の方に向かった。
なんでここにいるのかとか完全に撒けたと思ったのにとか疑問はたくさんあるけれど、そんなことを考えることよりも早くこの場から逃げなければとそのことだけが頭を支配した。

