そこにいるのは、無造作に整えられた艶のある黒髪に、同じ色をした人を見透かすような深い夜色の瞳。
すらりとした身長と、怖いくらいに端正に整った顔。
無表情だけど右目の下の泣き黒子が色気を感じさせ、漆黒の瞳が毒々しく存在感を見せつけてくる。
極めつけに、見るからに高そうな黒のスーツに身をつつみ、赤のネクタイをきっちりと絞め、足には綺麗に磨かれた革靴。
パンツのポケットに突っ込まれた左腕から財を十二分に持っていると言わんばかりにキラリと輝くシルバーの腕時計が見える。
水嶋 匡だ。
情報収集の為、遠くから見ることは何度かあったが、近くで実際に会うのはこれが初めて。
周りの人間を屈服させるようなオーラのようなものが何を言われたわけでもないのにこちらを本能的に黙り込ませてしまう。
この男に逆らってはいけない。
そんな危険信号のブザーがが頭に鳴り響く。
しかし、ここで怯んでいてはだめだ。
私は、精一杯平静を装った。

